笑顔はやっぱり(読了目安:2分)

ずっと以前のことですが、肩こりがひどくてとうとう首が回らなくなったとのことで来られた女性がいました。

困っていると言いながら終始笑顔、というか口角が上がったままなのです。

お仕事は…と尋ねるとデパート案内のかなり上の立場であると。

作り笑顔の職業癖から、肩こり、ストレートネックと進んだようです。

治療台に仰向けになって、泣きそうになりながらも口角は上がる…

緩めようとしても頬が震えてしまいうまくできません。

作り笑顔では、舌がまず緩むことはありません。

舌は小さな筋肉の集まりで、拮抗して固定に回るのは首の後ろの筋肉。それとアゴの筋肉です。

僕と共同研究していた歯医者さんによると、

口角を上げ続けるとベロが緊張し下顎を後ろに引き上げ、ストレートネックを助長するそうです。

ヘルメットのあごひもをぐっと絞っているようなものですね。

馬だとストップをかけられたままの状態…。

また、その女性は接遇指導をする立場でもあったようで、自ら姿勢を正していたのでしょう。

首のみならず、からだの後ろは上から下までカンカンに張っています。

仰向けでアレクサンダー・ワークを受けながら、恐る恐るですが作り笑顔が取れていくと、ポロポロと涙が…。

それから数回後には、肩と首が楽になったと言いながら、笑顔のオン・オフができるようになってきて、

ナチュラルな魅力ある笑い方をされ、あるとき予約時間になっても現れませんでした。

卒業かな?僕のレッスンは、ある時唐突に「来なくなって」終わることもしばしばです。

それもよし。最後の言葉を交わすのとはまた別の感慨深さがありますから。

笑顔はやっぱり、自然が一番。